くらし

『働く女子のキャリア格差』を読んだ

国保祥子さん著『働く女子のキャリア格差』

若い女性のみならず、若い女性とともに働く人も、読んでおくべき本です。

この本の前提条件である「はじめに」の部分で、著者のスタンスが非常にはっきりとしていますので、一部抜粋する形でご紹介させてください。

”女性がこどもを持つか、仕事を続けるかは個人の選択”であり、”選択肢を多く持つことは、豊かな人生につながる”。”もし育児と両立しながら仕事をしていきたい、または自社にそうした女性社員を増やしたいと考えているならば、あらかじめ知っておいたほうがいいことがたくさんあり”、特に”育児期間をどのように過ごすかは、その後活躍できるかどうかを大きく左右する”ことが分かってきた。

”「女性の擁護」をするのではなく、組織や会社の目線から見て、なぜ女性に期待や投資をすることが合理的なのか、どうすれば女性が「権利主張者」ではなく「組織貢献者」になり得るのかを研究者として解説したい”

(「はじめに こどもが生まれたら営業成績がよくなった!?」より。抜粋部分はイタリック体にしています。)

本編においても、「雇用側として女性に期待する考え方」「働く女性として意識すべき考え方」というかたちで、両者の立場に基づいて論を進めている点でとても納得感が強いです。事例も多数掲載されているのですが、それぞれの立場からみる解説がまた共感だらけでした。

結局のところは「ミスコミュニケーション」に尽きる。意思の疎通って、できているようで、できてない。話していない部分に隠されている思いのたけをどこまで表現するのか、どう表現するのか。育児勤務が絡んでいなくとも、大きな課題のあるテーマだと思いました。

本当に、どの章も内容が濃すぎます。早く読んでほしいので、目次と見出しの一部を抜粋します。興味を持てないわけがないラインナップですよ。

・はじめに こどもが生まれたら営業成績がよくなった!?

・序章 働く母親たちの現状
 こんなに多い”不本意専業主婦”/女性は仕事へのモチベーションが低いのか?/
 ミスコミュニケーションに陥らないために ほか

・第1章 女性にまつわる誤解と矛盾
 「管理職になりたくない」の本当の意味/生き残れる組織とは ほか

・第2章 「女性の敵は女性」問題
 後輩たちを歯がゆく思う「均等法世代」/ワーキングマザー側も歩み寄りを ほか

・第3章 時短トラップにハマる女性たち
 「なんとなく時短」でマミートラックへ/女性も管理職になることの合理性/
 積極性とチームの意識を忘れない ほか

・第4章 ぶら下がりワーキングマザー vs. 働きがい
 ママに優しい職場でぶら下がり化が進む/実は、ぶら下がっている方も不本意である/
 やりがいは権利主張からは生まれない ほか

・第5章 女性が活躍している会社はどこが違うか
 1.職務内容制約の克服 2.勤務地制約の克服 3.労働時間制約の克服

・第6章 家事育児も戦略的に考える
 育休を「夫婦から育児チームへの適応期間」に/
 家事の効率化とプロジェクト・マネジメント ほか

・第7章 女性が活躍する会社にしか未来はない
 次世代の「あたりまえ」をつくるための半径5メートル/
 自己投資はあなたを裏切らない ほか

・終章 「キャリア格差」を乗り越える

・終わりに 未来の「働く人」のために

みんな読むべき課題図書だとさえ感じています。この本を読むと、考えることが山のようにわいてきますよ。

***

キャリアについてはわたし自身も、日々思い悩んでいます。

・仕事に思いっきり打ちこみたい
・20代のうちは仕事のことだけ考えていたい
・結婚は30を過ぎてからでもいい

「やりたいことをやるにはどうしたらいいんだ」という思いは、今ちょうど20代後半にさしかかった世代は特に、男女問わず感じていることではないでしょうか。しかしここに、女性となると

・とはいっても子どもを産むなら早い方がいいみたい…
・そうなると、早く結婚しないといけないのか…
・子どもができたら、今みたいに働けなくなるな…

という、焦りに近い悩み将来へのぼんやりとした不安が別次元で割り込んできて、事態を複雑化させています。割り切ってしまえば簡単な話だけれど、こればっかりはご縁とタイミングの話だし、自分でハンドリングしきれない点でストレスがかかります。

この本を読むと、そういった分からない・知らないことでかかるストレスが少し軽くなったように感じました。もちろん、読んだからといって環境が変わるわけではありませんが、考え方のバランス感覚を、またひとつ手に入れた気がします。

ここ1年の間で、割と近しい先輩がふたり、産休に入りました。

こちらのツイートで書いた先輩は、幸いつわりもほとんどなく、いつも通りすぎて逆に心配になるくらいでした。先輩は、ツイート内で挙げた4つのポイント通り、まさに『働く女子のキャリア格差』で言わんとするところを素で体現されていました。

一方、もうひとりの先輩(Aさん)は、とても仲良くしていたはずなのに、、最後、もやっと感を残してしまったのです。その原因は「有給の取得の権利」についてです。

わたしの会社では、半期ごとに規定の有給取得数をすべて取りきるのが通例です。
Aさんは役職についていましたが、同じ役職のメンバーはほんの数人。そのため、「産休に入った期間〜下半期に人員の補充が来るまで」の間、このメンバーは有給を取ることができなくなりました。年次が高い人の方が取れる有給数は多いので、一番休み日数が減ってしまったのは大ベテランのBさんです。

最初の頃はBさんも「そんなのかまわないよ!新しい人が来たら休むから、全然気にしないで!」と言っていました。ところが、Aさんのつわりは大変に重く、突発有給や時短勤務(産前の時短は特例でした)が続く日々。ひとり欠けると回すのがかなりハードになる役職なので、Bさんのみならず、この役職メンバー全体が疲弊する事態に陥りました。

消耗しているのはAさんだって同じ。というか、Aさんの方が命がけだから疲弊のレベル感が違う。それは分かっているのだけど、、

みんな、ギリギリのラインでやっていたある日、Aさんはこう主張しました。「溜まっている有給の一部が産休に入ると消えてしまうと分かった。ならば、それらを産休直前にあてることで、産休を長くしたい」。

Aさんの産休が長くなることは、役職メンバーの休みがさらに減ることを意味します。Bさんはもう我慢の限界でした。チーム全体の公平性を尊重するタイプのBさんは、いくら事情が事情でも、これ以上メンバーに負荷をかけるわけにはいかないと判断したのです。

上長を巻き込んで相談した結果、結局Aさんは有給を細かく分散させて取ることになりました。産休は伸ばせず、有給は少し消えた形です。

わたしが思う今回のもやもやの原因の大部分は、「会社の制度」にあると思いました。お互いに配慮しあって全力は尽くしていたのですが、限界を超えると、お互いの主張のみになってしまうものなんですね。一番悲しいパターンのように感じました。この件で感じた改善できそうな点は次の通りです。

・産休前は、激務な役職であれば外すこと
・役職は外すけど、そのサポート的な役職をお願いすること
・役職をそのままにするなら、補充の人員は速やかに配置すること
・普段から有給は完全に取得させておき、無駄に溜めないこと
・長期休暇で有給が消えてしまう仕組みを変えること
・そもそもの業務内容の精査。常にギリギリである状況を変えること

役職を外すという結論を出すのは、わたしとしては非常に抵抗があります。でも、販売職という仕事柄、立ち仕事でストレスフルなわけですから仕方がないような。。そしてこれらのほとんどは、わたしに権限のない話ですね。

それと、認識したくないけど感じてしまったことが、「女性の敵は女性」ということでした。先輩ママさんが多い職場である一方、役職持ちの女性は独身のバリキャリが多くて。基本的には、みんな良い人なんですけどね。。ちなみにAさんはその有給で旅行してましたし、Bさんは育児勤務に対して目くじら立てがちですね。。どっちも気持ちわかるけどさ、、

わかっていても、うまくいかないものだなあ。

現場からは以上です。