百貨店、クリアランスセール不要論

大手百貨店各社は、6月下旬のタイミングで軒並みクリアランス商戦に入りました。

わたしも販売員として店頭に立っていますが、クリアランスを楽しみにしていたお客さまが連日多くいらしていて、本当にありがたい限りです。

ありがたいのですが。

クリアランスセール、いりますか?

販売する側がこう言うのは非常に気が引けるのですが、今回あらためて実感してしまった次第です。

そう考える理由は3点あります。

①真のクリアランス商材の不足
②百貨店は安売りでは勝てない
③購買スタイルの変化

理由①真のクリアランス商材の不足

「クリアランス」というのは、ただのセールと違います。在庫をクリアに一掃するからクリアランスセールです。

しかしながら、百貨店のクリアランスセールはただのセールと化しているのです。
真のクリアランス商材が足りていません。

真のクリアランス商材とは

「この前まで店頭に定価で並んでいたのに、値下げして再登場した商品」のことです。

流行は毎シーズン変わります。そのため、せっかくオリジナルで作った商材や厳選して仕入れた商材であっても、来年には売れなくなる可能性があります。ということで、次のシーズンに持ち越さないために、値下げして販売するのです。

これが「真のクリアランス商材」であり、お客さまに価値あるセールを提供する点からも、在庫処分という観点からも理にかなった販売手法です。

はびこる「セール用商材」

一方こちらは、「最初から安い価格設定で作られた商材」です。

要は値下げをしたわけではないのです。「真のクリアランス商材」にボリュームを出すために、わざわざ作られています。

もちろんセールとして出すわけですから一定のお得要素はありますが、セールのために生産している商品なので、値下げ率と希少価値という点で「真のクリアランス商材」に劣ります。

この「セール用商材」に依存している(せざるを得ない)状況でのクリアランスセールによって、本来であれば在庫一掃すべきところを、「セール用商材」を大量に仕入れる=在庫化するという本末転倒な事態が起きているのです。

真のクリアランス商材が不足する原因

様々な要因がありますが、根本は百貨店とメーカーのこの思惑にあると考えています。

・百貨店;在庫リスクを負いたくなくて、商品を買い取らない風潮
・メーカー;作っても買い取ってもらえるか読みきれないから、商品生産をセーブ

先程から「仕入れる」という言葉を用いていますが、仕入には2つのスタイルがあります。在庫を買い取る方法と、在庫を借りる方法です。

仕入れた商材が売れるかどうかは、店頭に並べてみないと分かりません。であれば、最初から買い取るのではなく、借りておいて売れた分だけ支払うという後者のやり方はたしかにリスクが低いです。

でもその手法が多くなると、しんどいのはメーカーですよね。いつしか、商品供給が抑えられるようになってきてしまい、買い取るにも量が無い状態。結果的に「真のクリアランス商材」が不足するのです。

仕入形態がもたらす問題です。簡単に解決する話ではありませんね。

理由②百貨店は安売りでは勝てない

百貨店でお買い物をするとき、何を期待しますか?
安いものではないはずです。質の高いものを、間違いなく買いたいはず。

だからこそ、結構な思いをして買った商品がやすやすと値下げされていたら、どう感じますか?せっかく百貨店で買ったのに、駅ビルの中のショップで同じ商品を見かけてしまったら、どうでしょう。

たとえ使用感に満足していても、どこか残念な気持ちになるのではないでしょうか。

わたしは、お客さまにとっての安心感・信頼感につながる要素は「価格と品揃えの軸が保たれていること」であると考えています。

価格が保たれていること

先日も店頭でお客さまから「この商品は値下げしてるのを見たことがないわね、だからちょっと高いけど安心して買えるのよ〜」という声をいただきました。ちょうどクリアランスの直前でしたので、念のため確認されたようです。

簡単に値下げされるような商品なら、安いときに買いたいですもんね。でもこの商品は余程のことがない限り(取扱終了やメーカー倒産など)値下げしないものでした。

安易に値下げしないことで、お客さまからの信頼は高まり、販売する側は安心して質の良さを語ることができるのです。

値下げに走ってしまうと、先程のお客さまのような、しっかり吟味してお買い物をしたい人の期待を失ってしまうばかりです。

品揃えの軸が保たれていること

百貨店に陳列されている商品は、バイヤーがセレクトした商品だということで、長年積み重ねてきた信用があると感じています。

質の高いものを間違いなく買うことは、そもそも並んでいる商品の質が高くなければ叶わない話です。バイヤーが厳選した商材が並ぶ店頭があって、そこに優秀な販売員がいることで、相乗効果が生まれてお客さまに満足のいくお買い物をしていただけるようになります。

その点、①で述べた話がここにも影を落としてしまうのです。
「真のクリアランス商材」は百貨店でしか供給し得ない商材ですが、「セール用商材」は他との差別化を図ることが難しいです。百貨店業界の中でも差を作るのは厳しいのに、下手したらショッピングモールとの差別化さえできていない商品群さえ出てきています。

安売りで勝ちたいがために品揃えの軸がブレてしまっては、百貨店で買うことの安心感・信頼感をも揺るがすことになってしまいます。だからここは、死守しなければなりません。

理由③購買スタイルの変化

これはもう言わずもがなですが、今はすっかりネットでモノを買う世の中になりました。最近ではZOZOスーツも登場し、店頭でのフィッティングさえ機会を奪われつつある状況ですね。

欲しい!と思ったら、その瞬間、いつだって、ボタンひとつで商品が手に入ります。

となると、ただ安いという理由だけで、わざわざあれだけの人混みに足を運びますか?重たい思いをして、荷物を持って帰りますか?もし百貨店のセールにそれ相応の価値があれば話は別ですが、なければ…。

店舗のあり方を意識した上で店舗づくりをしないと、もうお客さまをつなぎ止めることはできません。新しい、若い層のお客さまを呼ぶこともできません。

だからこそ、中途半端なクリアランスセールはもう辞めにしませんか。

百貨店のセールはどうあるべきか?

百貨店のクリアランスセールは、年始の初売り出しに一本化すべきだと考えます。

勝ち目のない戦いに臨み続けては疲弊するばかり。ショッピングモールやネットのセールと同じようにセールをしたって、どうあがいても価格競争では100%勝てません。もし一時的に勝てたとしても、それを継続するだけのコストや体力がないですから、結局負けるんです。

でも唯一百貨店が勝てるのは「上質で信頼できるお品物を、優秀な販売員が丁寧な接客でご案内できること」、ここに尽きます。

この要素を年間を通して存分に引き出すためには、セールの期間を最低限にまで減らす必要があります。ということで、思い切って年始の初売り出しに絞るという策を思いついたのです。

メリットとデメリットを書き出してみました。デメリットは3点しか挙げませんでしたが、大きいです。

<メリット>
①「真のクリアランス商材」の量を確保することができる
②年始恒例の福袋も、「真のクリアランス商材」で組むことができる
③年始だけ、という特別感が来店動機を補強する
④お客さまからの商材に対する信頼感が上がる
⑤年始以外は上質な定価商材をじっくりご提案できる

<デメリット>
①夏物商材への購買意欲を高めきれず、在庫を消化しきれない可能性あり
②夏に在庫を消化できない分、在庫を積んでおく場所が必要
③夏のクリアランスを辞めた分の売上額は年間通してもヘッジしきれない可能性あり

お客さまに提供したい商材を、効果的に届けられるようにしたい。その一心です。

夏のクリアランスが無くなった間は、百貨店でコミュニティづくりをしたら面白いと思うんですよね。夏休み向けのイベント企画はすでに多数ありますが、ただ参加してワークショップして終わり、ではなくて、もう一歩踏み込んでみたいです。場を提供するイメージ。せっかく販売員も知識豊富な人が集まっているのだから、店頭での接客にとどまらず、もっとお客さまとの距離を近づける要素というか、枠というか、コミュニティのようなものを。。ああ、うまくまとめられませんね。

一時的には売上が落ちること覚悟で、試してみたいものです。

変わることをおそれてはいけないけど、できないよね

夏のクリアランスを辞めてしまうという大胆な策に踏み切る百貨店は無いんだろうなあと、正直思います。大企業ゆえ、思いつきだけでパッと動けるほど、フットワークは軽くありません。

百貨店の戦う相手が、目先の売上と前年値なのであれば、残念ながら衰退していくしかない。わたしの提案が合っているかどうかは置いておいて、百貨店業界、ひいては小売業界に課題が山積みであることは間違いありません。

百貨店、どこが生き残るんでしょうね。これからも動向を追いながら、わたしは日々目の前のお客さまを大切に店頭に立っていようと思います。

 COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

NO IMAGE

”接客”の価値はリアルな世界にしか通用しないのか?

NO IMAGE

プレミアムブラック?ブラックプレミアム?フライデー!

NO IMAGE

福袋はどうなっていくか?

<現役デパートガール直伝>鋳物ホーロー鍋・主要メーカー比較と選び方

NO IMAGE

伝統工芸が百貨店から飛び出すときが見えてきたかもね

NO IMAGE

誰でもプロフェッショナルになれる時代