お店づくり

『飲食業界 成功する店失敗する店』

なぜ、新規出店する店の8割は5年で消えてしまうのか?

表紙に書かれているこのフレーズに引っかかって、この本を買うに至りました。

これまでにも聞いたことがあります、新しいお店はまず1年持つかどうかだと。持ったとしても、そこからもう1年いけるお店はさらに限られていると。でもその理由をしっかりと把握できていたわけではありませんでした。

わたしも自分でお店を持ってみたいと思っている以上、いつかはこの「新規の店舗が5年で消える」という壁を乗り越えないといけないわけです。何が良くて、何が悪いのか。いまのうちに脳内に入れておこうと思い、読んでみました。

まず著者の重野さんですが、飲食店のプロデュースと直営店の運営をされています。プロデューサーが直営店を持っているのは珍しいことだそうですが、ご自身で店舗を運営されているからこそ、現場に即した知見が溜まっていてプロデュースに活きているとのことでした。

そんな重野さんがこれまでに携わった店舗は200店舗以上。百戦錬磨とはこのことかもしれません。

ここで本の構成をご紹介します。

・はじめに
・飲食店プロデュースの基礎知識
・第1章 店舗コンセプトで決まる成功と失敗
・第2章 メニューで決まる成功と失敗
・第3章 人材で決まる成功と失敗
・第4章 コスト管理で決まる成功と失敗
・終章 長続きする飲食店を目指して

『飲食業界 成功する店失敗する店』p6-10

各章に成功例と失敗例が数個ずつ紹介されているので、重野さんの伝えたいことが立体的になっています。成功例の書かれた本は多いですが、赤裸々な失敗例を挙げてくださっているからこそ、より伝わりやすくなっているように感じました。

ところで重野さんの直営店ですが、こちらです。

店名だけでも、ちょっと「おっ??」ってなりませんか。サブタイトル的な「塩と日本酒」から、なんだかこだわりのあるお店のような雰囲気が出ています。これこそが第1章で言うところの「店舗コンセプトで決まる成功」なわけです。

コンセプトはただ掲げれば良いわけではありません。こだわるポイントに対するストーリーが深いからこそ、お客さまにもそれが伝わります。難しいことですが、よそには真似できないという意味でもコンセプトは大変重要だということでした。

…こういったお話しがひたすら書かれています。学びでしかありませんでした。

本を読みきってみて強く印象に残ったことを書いておきます。

ひとつめは、自分で足を使って情報を得ることの大切さです。お店の出店場所の候補を見立てるにしても、新メニューを開発するにしても、ものすごく綿密にリサーチされていました。自分の目で、頭で、舌で感じたことこそが生きた情報なんだろうなと、あらゆる成功例・失敗例から感じ取りました。

やっぱり自分で情報を得よう。そのための手間は惜しまないようにしよう。そう思いました。

ふたつめは、お客さまが求めていることを追い求める姿勢です。どうしても自分の好きなものやこだわりたいものに走りたくなって、それはそれで必要ですが、「お客さまが求めていなければ売れない」という当たり前の視点が抜け落ちることが往々にしてあるようです。

これはとても耳が痛く感じました。というのも、わたしも文章をいろいろ書いてきた中で「こんなの読んでも仕方がないよな」と思うことがあるのですが、まさにこの話に当てはまるなと。読まれたいのなら、書きたいものじゃなくて、求められているものものを書くべきです。でも、なかなかそれができないんですよね、、、

さて、この本の最後の方は数字の話が多くなります。

リアルな数字が並んでいるので、自分が計画書を書いたりするとき大いに参考になりそうです。また、普段から数字を意識した頭の回し方をしてトレーニングしておくべきだなと感じました。

まずは自分の収支をきちっと把握するところからはじめてみます。また、お店に入ったときの観察眼をするどくして、売上や人件費、場所代など、そのお店にまつわるお金についての想像力とリサーチ力をつける練習もしていこうと思いました。

お店を開きたい人にはもちろんですが、店舗運営は関係なくチームを切り盛りするマネージャー的ポジションにいる人にもおすすめできる本です。

お店をうまく回すには、チームをうまく回す必要があります。店舗運営はチーム戦です。重野さんの対人関係におけるノウハウは飲食店経営のみならずあらゆるチームで活用できるものですので、チームマネジメントでつまずきを感じている人に良いヒントになることでしょう。

ということで、この本も手元に残しておくことにしました。しばらくしてから読み返してみて、自分の進んでいる方向にブレがないか確認することにします。良い本でした。ありがとうございました。