わたしはよく、本屋さんの「ビジネス書・店舗運営」あたりのコーナーに行って、ふらふら気になる本がないか見ています。
今回の1冊も、そうやってふらふらしていて見つけました。
|
そういえば、DEAN&DELUCAってよく知らない
表紙を見たときに率直に感じたことは、「そういえば、DEAN&DELUCAのことってよく知らないけど…人気だよねえ…」です。
DEAN&DELUCAで、ざっと思い浮かぶイメージはこんなところです。
- みんなトートバッグ持ってるよね
- おしゃれなお店
- 東京駅の改札内にテイクアウトできるお店あって好き
- 素材重視
- 何屋さんっていうんだろう…お惣菜屋さん?
おしゃれなお店はひととおり見たい派なのですが、DEAN&DELUCAはいつも混んでいるので、なんとなくあんまり行かないお店です。
だからわたしの頭にあるDEAN&DELUCA像はかなり曖昧でした。
ちょっと立ち読みして「はじめに」で引き込まれた
わたしは立ち読みするとき、「はじめに」と目次を見て、本を買うかどうか決めています(みんなそうか)。
で、今回もさっそく「はじめに」を読んだのですが、もうこれだけで引き込まれてしまって。
この人と一緒に仕事してよかったな。
チームのメンバーや新しい取引相手と何かに取り組んでいるとき、そんなふうに思うことってありませんか?
考えてみると僕の場合、そういう相手は必ず「一緒に食事をしたい」と思う人だったことに、最近気づきました。『食卓の経営塾 心に響くビジネスの育て方』はじめに p3
ああ、「食事をしたい」か。これは言われてみると、すごく納得感のある気づきです。楽しく、ときに熱く語り合いながら一緒においしいものをいただける人って、波長が合っているような気がしますよね。
筆者でありウェルカムグループの代表である横川さんは、一緒に食事したいかどうかをひとつのアンテナとして働く仲間を探している、選んでいる、見つけている。シンプルでいいなと思いました。
「はじめに」には、もうひとつ気になるワードがありました。
ライバルは個人店。日常生活で感じた「なんかいいな」を追求する。一緒に食事をしたい人と仕事をするーーー今回、改めて「日本にしかないディーン&デルーカを形づくってきたもの」を思い返して気づいたのは、事業を成長させるヒントは日々の生活にあふれているということでした。
『食卓の経営塾 心に響くビジネスの育て方』はじめに p4
あれだけおしゃれで有名なお店のライバルが「個人店」だなんて。でも、言わんとすることはちょっとわかる気がします。
お店が大きくなって店舗数が増える。働く仲間が増える。これらはすごく喜ばしいことだしとてもパワフルなことです。
でも、相当気をつけていないと、店内のコンテンツ密度が下がったり方向性がブレたりする一因にもなると考えていました。
だからこそ、「個人店がライバル」という視点を持つ大手小売店「DEAN&DELUCA」にものすごく興味がわきました。
ということで、これはじっくり読まねばと思い即購入です。
「こんな経営者のもとで働いてみたい」と思える目次
この本を買って帰ることは「はじめに」を読んだ時点で決めていましたが、一応目次にも目を通しました。
全5章で、小見出しが各章に10項目前後あるスタイルです。
全部引用するのはしのびないので、わたしが読み終わった後に心に残っている小見出しだけピックアップして引用します。
はじめに
1.哲学を共有するーー見るべきものは「根っこ」にある
人生を変えた、「人」と「店」との出会い
1億円の授業料
ソバとパスターーデルーカさんの教え
コラム<京都で「店の力」を知る>2.ブランドの前に人があるーー価値をつくるのは看板ではない
ライバルは個人店
トートバッグの話
時代を感じて「引き寄せる」
看板よりも人に価値がある3.好きこそ仕事の上手なれーー興味の熱量がすべてを決める
まずは「手書き」から始めよう
メンバーの「居場所」が見える地図
チームでパワーは増幅する
「目線のずれ」はトラブルのもと4.大は小を兼ねないーー「いい塩梅」を追求する
おいしいチーズ理論
ネットワークとは信頼関係である
ライセンス買い取り5.食卓の経営塾ーー感性を共鳴させる
電子レンジとオーブン
あえて競争しない
ヒットを生んだ「逆張り思考」
おいしいものばかり食べるな
自分の「リアル」を信じろ『食卓の経営塾 心に響くビジネスの育て方』目次
成功者によくある「ギラついた感じ」はここにはなくて、どこまでも素朴というか、丁寧にハンドドリップしたコーヒーみたいな印象がありました。
でもじつは一瞬だけ、ギラついた感じが垣間見えるパートがあります。
それは4章の「ライセンス買い取り」から4章の終わりまでです。グループ会社を統合することにした話はちょっぴりギラつくのですが、「これは違う」とすぐに気づいて軌道修正されました。
なんだか人間らしい感じがして、とてもいいなと思いました。気づけることがすごいですよね。
(ちなみに統合話を読むまで、お気に入りの雑貨屋さんであるCIBONEやGEORGE’SがDEAN&DELUCAと同じウェルカムグループだったとは知りませんでした…!てっきり、それぞれ独立した会社だと思っていたので。いやあ…勉強不足でした…)
ソバとパスターーデルーカさんの教え
特に印象に残ったパートを少しだけ紹介します。
「ソバとパスタ」のお話しは、DEAN&DELUCAを日本で立ち上げたもののうまく利益が上がらず、経営が大ピンチになったときの話です。
デルーカさんの教えをすごく簡単にまとめてしまうと、「郷に入れば郷に従え」だし、「初心忘るべからず」、です。
DEAN&DELUCAが日本でうまくいかないのは、現地の世界観をあまりにもそのまま持ち込んだからだ! と気づいたのは、デルーカさんと話せたからそうです。
「きみはソバとパスタだったら、どっちをたくさん食べるんだい?」
『食卓の経営塾 心に響くビジネスの育て方』p33
たしかに日本には日本の食文化があって、おいしい素材があります。だからデルーカさんは、もし自分が日本でお店をやるなら、日本食をたくさん置きたいと話してくれたと書いてありました。
それにしても、DEAN&DELUCAみたいにかっこよくて完成されたものを日本に持ち込んだら、それだけでヒットしそうって思えますよね…。だから、そのまま持ち込んだ思いも、わかる気がします…。
ほんとうに、商売にはたくさんのつまづきポイントがあるみたいです。一筋縄ではいかないなあ。
ちなみにDEAN&DELUCAの創設時のビジョンは、デルーカさんのこの一言にぎゅっと詰まっています。
「チーズだけじゃなく、イタリア食材だけでもなく、世界にはまだ知らないおいしいものがたくさんある。売れるものじゃなく、売りたいもの、自分たちが食べたくて、食べる価値のあるものだけを扱う店を作ろう。おいしいものを味わう感動は必ず人を幸せにするはずだから」
『食卓の経営塾 心に響くビジネスの育て方』p34
デルーカさんの思いを知って(いろんな経緯があり、ちゃんと知らないままのローンチだったようです)、この思いに立ち返ることで、経営を上向きに修正することができた、とのことでした。
迷ったら初心に立ち返る。よく本とかに書いてあることだけれど、やっぱり間違いのないことなんだなあと感じました。
自分がチームを持つようになったら、また読み返したい一冊
「はじめに」にも書いてあったように、横川さんは「一緒に食事をしたいかどうか」が仕事仲間の選ぶ基準になっていました。
この本にはほかにも、「やさしい目線」というか、ギラついてない感じでチームをまとめていった話が書かれています。
3章の『メンバーの「居場所」がわかる地図』あたりのお話しも、すごく良かったです。チームの仲間みんなにビジョンを共有することでチームのやる気や可能性がアップしていくという話です。
わたしの前の職場ではビジョンの共有が効果的ではなかったので、今後大事にしたい要素だなと思いました。
今後、わたしがまたチームを持つことがあったら、その時にもう一度読み返したいです。
横川さんの言葉の選び方がとても心地よく、するする読める本でした。気になったらぜひ手に取ってみてくださいね。
とりあえず、今度がっつりお店見に行ってみようっと。
|